平成 25・26年度科学研究費助成事業(挑戦的萌芽研究)(課題番号 25580137)
研究代表者 笹島茂
概要
本研究は、『複雑性理論にもとづいた外国語(英語)教師の認知の質と特徴に関する探索的研究』というテーマをもとに、平成 25・26年度科学研究費助成事業(挑戦的萌芽研究)(課題番号 25580137)として、実施した研究成果報告である。2年間に、日本の英語教師の認知の質と特徴を理解するために、対照事例としてフィンランドを取り上げ、研究協力者とともに、アンケート、授業観察、インタビューなどを実施し、探索的に研究した。その研究成果は次の2点にまとめられる。1)研究手法において、量的・質的研究を組み合わせた混合研究法(mixed methods)を基盤に、さらに発展した主観性(subjectivity)と再帰性(reflexivity)を含め、複雑性(系)理論(complexity theory)の考えを応用し、分析する方法を開発したこと、2)その研究手法をもとに探求し、日本の英語教師の授業や研修に対する認知の特徴の一端を明らかにしたこと。また、本探索的研究は、この成果をもとに次なる展開を提言している。
目的
本研究は、言語指導にかかわる教師の認知(ビリーフ、知識、思い込みなど)の探求を目的としている。本研究は、欧米の探索的な質的調査方法(インタビュー、観察、懇談)では明らかにしにくい、複雑な言語教師の認知を日本的な思考と複雑系理論を応用した「全体を見る」手法を用い、大学英語教育学会言語教師認知研究会(代表:笹島茂)がこれまで蓄積したデータを基盤として、フィンランド、ヘルシンキ大学Pirjo
Harjanne 教授の協力を得て、言語を指導する教師の認知の特徴を探索的に調査することを意図している。
本研究の具体的な目標は次の3点である。
1.
言語教師の認知の調査方法の開発
2.
言語教師の認知が与える授業と生徒の学習への影響
3.
言語教師の認知に関する複雑性理論(Complexity
Theory)の応用
背景
言語教師の認知(Borg, 2003, 2006; 笹島
& ボーグ, 2009)は、教育心理学、脳研究などでは解明がむずかしい複雑なシステムである。特に、日本の言語(英語)教師の認知は、申請者が主催する大学英語教育学会言語教師認知研究会のこれまでの調査によれば、相当に複雑であることが分かっている。本研究は、その複雑な教師の認知過程を、言語教育においても成果をあげているフィンランドの言語教師の認知と比較することで、SLA(第2言語習得研究)研究ではあまり触れられていない教師の要因を、教師のビリーフ、意思決定などの認知過程に注目し、Dörnyei(2011)のRetrodictive Qualitative Modelling (RQM)という質的調査法を応用した調査方法を用い、教師に授業観察とインタビュー及び「懇談(KONDAN)」を行い、検証を重ね、これまで明らかにできていない複雑な教師認知を「教師のこころ(teacher
kokoro)」として理解し、探求することを目指している。
本研究者は、10年以上の間、フィンランドの外国語教員研修に興味を持ち、学校訪問などのフィールドワークを通じて、フィンランドの言語教育について調査してきた。フィンランドの大学や小中高の教師と共同で、言語教師の認知の研究を続けている。また、大学英語教育学会(JACET)言語教師認知研究会(会員約50人)を主催し、「「懇談(KONDAN)」(本音を語る)調査(発言を記録し、談話分析などを行い多面的に分析)という日本的な手法で、日本の中高の英語教師の質的調査と分析を行なってきた。
この5年間ほどで、CLIL (Content and Language Integrated
Learning)(科目内容とことばを統合する学習)という教育が次第に浸透してきた。必ずしも英語だけを教えるのではなく、英語と科目内容(理科、社会、芸術、体育、家庭など)を統合して学ぶ環境をアレンジするという教育のことを総合して言及している。実態は多様であり、バイリンガル教育や内容重視の英語教育を含むアプローチのことを広く指している。しかし、このCLILに関心を持っている人は、やはり英語や他の外国語指導に携わっている教師である。研究では、このようなCLIL的な教育に携わる教師も対象とすべく研究を進めているが、本研究の調査は、ほぼ英語教師を対象としている。
言語や学習関連の研究は進んだが、言語教師の認知に関する研究はようやく始まったばかりである。本研究が対象とする言語教師認知の研究は,最近になり複雑性(あるいは系)理論(Complexity Theory)(cf. Larsen
Freeman, 2002; de Bot, 2008)などとの関連性により解明が進むと予測されている。本研究は、そのような複雑適応系(Complex
Adaptive System)(CAS)の考え方を、言語教師認知を捉える一つの柱として基盤に据えて、教師認知の調査方法や分析方法の可能性を探り、日本の英語教師の「こころ」を理解することで、英語教育の改善を図ろうと意図したものである。
報告の詳細は次のとおりである。下記をクリックしてダウンロードしてください。
成果報告書(暫定版) 2015年5月7日現在
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成果報告書(暫定版) 2015年5月7日現在
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